クッチャクッチャ
絵夢はエルのように食いしん坊ではない。
でもエルが興味を持たなかった花やペットボトルの蓋などを、床に落とそうものなら猛ダッシュで咥えて逃げる。
そしてわたしの手の届かないテーブルの下やこたつの中に持ち込み、それはそれは嬉しそうにクチャクチャやるのだ。
エルは「交換!」と言えば、ぽろっと吐き出しおやつと交換した。
絵夢にはその手が使えない。
取り押さえて羽交い絞めにして、口をこじ開けて出させる。
昨日はシンビジウムの花びらだった。
気がついたのが早かったからすぐに取り上げられたが、クッチャクッチャしているのに気がつくのが遅く、ごっくんしてしまうこともある。
シンビジウムはお口に合わなかったらしく、噛み散らかしただけだった。
笑ったのは、ウンチ。
こたつの布団の上に、茶色くて硬いものが散らばっていた。
私はトイレットペーパーでつまみ上げ、絵夢の鼻先に「ほれほれ、これはなんですか?」と差し出した。
すると絵夢はくんくんしたと思ったら、ぱくっと咥えた。
「やめて~!」というより早く、絵夢はルンルンランランで走り出し、寝室や倉庫部屋をパグ走り。
やと捕まえて口を開けさせたら、なんとウンチではなく「コーヒー豆」だったのです。
ミルに入れる時、一粒こぼれたみたい…。
絵夢は今日も嬉しそうにクッチャクッチャしている。
座布団カバーから出た糸を。
出た…というか、「出した」糸なんですけどね。
考えようによっては、絵夢が拾って咥えそうなものはすぐにつまんで捨てるし、糸ははさみで切るようになったから、いいことかも。
絵夢が咥えたものを見せびらかすようにして走り回るのは、エルがいなくなってから。
絵夢は絵夢なりに、わたしを遊んでくれているのかもしれない。
そう思うと、ソファの背で窓の外を見ている絵夢の背中が愛おしくなる。
「姉ちゃん、今日は何したらお母さんがよろこびますかねぇ」と言っているような気がして。
まだまだ遊びたい盛りの絵夢。
わたしが遊んでやらないとね。
画像はベランダから見た絵夢。
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